小説を読んでいて「無償に野菜が食べたくなった」という経験なんてあまりないものだと思う。
読んでいて、ごくりとのどが鳴った。
水で洗っただけの
野菜をザルにごっそりもって、「さあ、どうぞ」と当たり前の顔して
いう笑子さんの野菜サラダ。
笑子さんとは、江國香織の小説『きらきらひかる』のアルコール中毒の主人公だ。
もろくて純粋な笑子さんが作る(?的確にいえば洗う)サラダは
嘘がつけない味がしそうで、気が付けば純粋に心に響いてのどを鳴らしていた。
昨日、スーパーでおもわず、きゅうりを手にとっていた。
もちろん生で食べるためだ。
ボールに入れたきゅうりをさっと水に通して、洗う。
これで料理は完了。
あとはボールのままダイニングテーブルにどかりと乗せ、
素手で、1本もって、ガブリとかぶりつけばいい。
ザク カリカリカリ サクサク
口の中の少しずつ上品になっていくBGMとともに
きゅうりのみずみずしい純粋な味が広がる。
それはとても懐かしい味がした。
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